愛鳥が突然食べた物を吐き戻したら、とても心配になりますよね。
「吐く」という行為は人間であれば大変に苦しく、体に何らかの異変があった場合に多く見られます。
インコやオウムでは、発情期を迎えたオスが求愛行動として、食べた物を吐き戻してメスに与えます。
この行動を「発情吐出」と呼び、人間の飼育下によるオスは発情しやすく、一年を通して発情吐出をし続ける個体も多いです。
では、文鳥の場合はどうなのでしょうか?
なぜ餌を吐き出すのか?病気の可能性は?
鳥の「嘔吐」とは、「胃の内容物が強制的に食道から口腔を経て排出されること」です。
鳥の「吐出」とは、「そ嚢(そのう)の内容物が強制的に食道から口腔を経て排出されること」です。
そ嚢は消化管の一部分であり、食べた物を一時的に溜めておくための器官です。
食後のインコが枝に止まっている姿を見れば、食べた餌でそ嚢が膨らんでいるのが何となくわかります。
「嘔吐」するのはインコやオウム類に多く、「吐出」するのはフィンチ類(文鳥や十姉妹など)に多いとされます。
文鳥が餌を吐き出す理由
吐出する原因として考えられるのは、精神的な要因などによる「脳髄質性」、嗅覚刺激や視覚刺激などによる「脳神経性」、毒物などによる「中毒性」、炎症などによる「内臓性」、ビタミンの欠乏などによる「欠乏性」、乗り物酔い、一過性の体力低下、風邪症状などによるもの、などが挙げられます。
考えられる病気や、その他の原因は?
- メガバクテリア症
メガバクテリアは酵母の一種で、鳥の胃に感染し、重度の胃炎や胃拡張を引き起こします。
一般的には親鳥が雛に給餌する際、吐き戻した餌の中に潜むメガバクテリアを雛が餌と一緒に摂取することで感染します。
また、同居する感染鳥の糞便中のメガバクテリアを他の鳥が経口摂取すれば感染します。
症状は吐出、軟便、下痢、血便などです。
長期間の抗生物質などの投与によって対処します。
- カンジダ症
カンジダは、鳥の消化管に常在する菌です。
健康な個体であれば、通常は問題ありませんが、(ご飯やパンなどの)熱で変性しているでんぷんを食べさせたり、ビタミンの欠乏による免疫力の低下などから、そ嚢や胃の粘膜に菌が感染して炎症が起きると、カンジダ症を発症します。
特に、熱湯で作る挿し餌を与えられている雛や幼鳥に多く見られます。
症状は、吐出、軟便、下痢、血便などです。
抗真菌剤、抗生物質などを投与して対処します。
- トリコモナス症
トリコモナス寄生虫が文鳥のそ嚢に感染すると、そ嚢炎を引き起こします。
幼鳥に頻発し、症状としては、吐出、吐き気、食欲の低下などです。
抗トリコモナス剤などを用いて治療します。
入院治療が必要な場合もあります。
- 肝肥大
脂肪肝症候群や鳥クラミジア症、心疾患などで肝肥大を起こすと、吐き気や吐出などの症状が見られます。
- 生殖器の腫瘍や嚢腫によるもの
オスの精巣腫瘍、メスの卵巣腫瘍や卵管腫瘍、卵巣嚢腫による消化管の圧迫で、吐出や吐き気、腹部膨大の症状が見られます。
- 甲状腺の肥大によるもの
甲状腺が肥大すると下部食道が圧迫されて通過障害が起きるので、吐き気の症状が見られます。
- その他
毒物摂取(毒性の物、除虫剤などを文鳥が口にする)で吐き気や吐出の症状が見られます。
まとめ
嘔吐や吐出を示す病気では「そ嚢炎」が挙げられますが、細菌単独でそ嚢炎が起きることは少ないとされます。
環境下での色々な原因が重なって嘔吐や吐出を起こすと考えられます。